電子タバコの普及や喫煙可能な場所の減少など、近年大きな変化を見せ続けている喫煙社会において、「タバコのポイ捨て」は今でも大きな社会問題となっています。
どの地域でも未だに目にする「ポイ捨て」は、そもそも法律で罪に問われるのでしょうか?
結論から言うと、タバコのポイ捨ては「法律に違反」しています。
この記事では、タバコのポイ捨てがどんな罪に問われるのか、そして、ポイ捨てを見た時に警察に通報してやめさせる事は可能なのかについて解説していきます。
目次
タバコのポイ捨てを規制する法律
近年の喫煙社会事情により喫煙者の割合は年々減少していますが、タバコのポイ捨てを目にする機会は未だに多いでしょう。
タバコのポイ捨ては、よく「マナーが悪いな」と周りから評されますが、マナー違反だけで済む行為ではありません。
この行為は、法律によって規制されており、場合によっては罰則を与えられてしまう場合もあります。
では、実際にどんな法律で規制されているのか、どんな罰則があるのかを1つずつ見ていきましょう。
タバコのポイ捨てに関する法律①:軽犯罪法違反
タバコのポイ捨ては、「軽犯罪法」に違反する可能性があります。軽犯罪法とは、社会の秩序を乱す軽微な違反に対して刑罰を与える法律で、以下のように定められています。
二十七 公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
上記のように、軽犯罪法27条において「汚物又は廃物を棄てた者」は罰則の対象とされています。
もちろんタバコもこれに該当するため、タバコをポイ捨てする行為はれっきとした法律違反に該当する行為なのです。警察を含め、確実に罪に問われ罰則が与えられるというわけではありませんが、法律で定められた違反行為であるという事実にはかわりありません。
タバコのポイ捨てに関する法律②:道路交通法違反
タバコを吸う場所やタイミングは人それぞれですが、喫煙者で車を運転する人は、運転しながらタバコを吸うこともあるでしょう。
車を運転しながら窓からタバコを捨てる行為は、「道路交通法」に違反する行為にあたります。道路交通法違反の罪に問われ、刑が確定した場合には「5万円以下」の罰金を命じられます。
また、道路交通法違反の行為であるだけではなく、車に乗ったままタバコをポイ捨てするという行為は、捨てたタバコが通行人や他の車の運転に影響を与える可能性があり、非常に危険な行為であるといえます。
さらに、ポイ捨てとは無関係ですが、運転しながらの喫煙は自然と片手での運転になり、自分の車の運転に悪影響を与えたり事故を引き起こす可能性があります。場合によってはタバコを吸っていたことで最悪の結果を引き起こしたり、別の罪に問われたりする場合もあるので、自分だけの問題ではないという認識を持つことが重要です。
タバコのポイ捨てに関する法律③:廃棄物処理法違反
タバコのポイ捨てを日常的に行い、何度も繰り返す事で該当する可能性のある法律が「廃棄物処理法違反」です。
この法律は、悪意のある廃棄物の処理方法を繰り返したり、非常に悪質な処理を行ったりする事に対して適用され、違反の罰則自体は「1,000万円以下の罰金もしくは5年以下の懲役」という、予想以上に重く定められています。
「捨てる場所がないから」といった軽い気持ちを理由に、タバコのポイ捨てを常習的に繰り返す事がいかに社会へ悪質な影響を与えるかという事を肝に銘じておいてください。
タバコのポイ捨てに関する法律④:自治体の条例違反
タバコのポイ捨てが違反とされるものには、国が定める法律以外にも「自治体で定められる条例」も挙げられます。
全国の多くの自治体では、タバコのポイ捨てをしないよう指示する内容が条例に含まれており、その中の多くで罰金などの罰則が定められています。
実際に、千葉県では「路上喫煙及びポイ捨て防止」を目的として、許可されていない場所での路上喫煙やポイ捨てを行った場合には2,000円の過料が科される条例を制定しています。
そもそもの法律違反に加えて、各自治体での条例に違反している可能性もあるのです。
タバコのポイ捨てが罪になり逮捕されるケース
ここまで、タバコのポイ捨てがどのような法律や条例に違反するのかを解説してきました。
法に違反する行為ということは、同時に「逮捕」される可能性が生じることは言うまでもありません。
実際にどのようなケースで逮捕されることになるのか、見ていきましょう。
長年家の前でタバコのポイ捨てを続けられている場合
特に郊外などでは多く見られるのが、家の前に日常的にタバコがポイ捨てされている場合です。このような場合、家の前にポイ捨てをした本人が日常的に行動する範囲に家がある可能性が高く、恒常化していくことがあります。
このような場合は、「家の前」という同じ場所で悪質な処理方法を繰り返したという理由で、先に述べた「廃棄物処理法違反」に該当する可能性があり、重い罰則あるいは逮捕に繋がる可能性が高いです。
「繰り返す」という事がいかに悪質だと扱われるかは認識しておく必要があるでしょう。
火事の原因となった場合タバコのポイ捨てが罪になる可能性もある
タバコのポイ捨てが原因で火事が起こった場合、そのポイ捨ての行為自体が罪に問われるケースもあります。
住んでいる場所がマンションなど複数世帯の居住地であった場合も含め、自分だけの問題ではないことは明らかです。
ここではタバコのポイ捨てが原因で火事になった場合に問われる主な2つの罪である「失火罪」と「放火罪」について解説します。
タバコのポイ捨てが罪になるケース①:失火罪
「失火罪」はタバコのポイ捨てが原因で火事になった場合に成立する可能性が高い罪です。
116条1項 失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。
同条2項 失火により、第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
「失火」とは「過失により火事を発生させてしまう」事を指し、このようなケースではタバコのポイ捨てをした後の火の不始末などが火事につながる「過失」に該当します。
これについては、火事が自分だけに影響があった場合にも「失火罪」に該当し、仮にマンションなどで他人を死傷させてしまった場合には「過失致死傷罪」にも該当します。
タバコのポイ捨てが罪になるケース②:放火罪
タバコのポイ捨てによって火事を起こしてしまった場合、故意ではない場合に失火罪に問われますが、そうではない場合に「放火罪」が適用される可能性があります。
「わざとタバコで放火なんかしようと思うわけない」と思うかもしれませんが、注意が必要です。
「火事を起こしてやろう」という気持ちでなくとも、「さっき捨てたタバコの火が段ボールに燃え移ったら火事になるかもしれない」というような認識があった場合、放火罪として扱われる場合もあります。
タバコのポイ捨てを見つけたら犯人特定して警察に通報してOK?
喫煙者ではない人や、ポイ捨てをしない常識的な人からすると、タバコのポイ捨ては非常に悪質で有害な行為に見えます。街を歩いていてポイ捨てを見かけた場合、悲しみや怒りが湧くこともあるでしょう。
そういった場合に、犯人特定を行って警察に通報したい場合、タバコのポイ捨てはれっきとした「違法行為」であるので、通報自体には何の問題もありません。
ただ、タバコのポイ捨て現場から犯人特定を行うことは難しいため、実際に罰則や逮捕に繋がるケースは多くなく、その体制がポイ捨ての減らない現状を生み出しているのかもしれません。
バレると分かっていてもタバコのポイ捨てをする人の心理とは
タバコのポイ捨てはよく公共の場で行われて他人の目に止まることも多いですが、なぜバレると分かった上でタバコのポイ捨てをする人がいるのでしょうか。
それは、「慣れ」や「集団心理」が働いているといえます。ポイ捨てが日常化して無意識にやってしまったり、心理的に「みんなやっているからいいや」「バレることはないからいいや」と捨ててしまう場合もあるかもしれません。
そのような背景もあり、簡単にやめさせるのは難しいですが、自分の行為がいかに危険で悪質な行為であるかということを理解させ、やめさせる必要があります。
タバコのポイ捨てをやめさせることに成功した事例をご紹介
タバコのポイ捨てを見つけた場合、警察に通報してもやめさせられる可能性は低いといえます。
ただ、「通報してやめさせる」というよりも、目的は「タバコのポイ捨てを撲滅する」というところに置くべきです。
ここでは、実際にタバコのポイ捨てをやめさせることに成功した事例を1つだけご紹介します。
投票式吸い殻入れを設置してタバコのポイ捨てが激減
環境問題に取り組むイギリスのNPO団体「Hubbub」は、街中にタバコを捨てるゴミ箱のようなものを設置しました。
そのゴミ箱は捨てる箱が2つに分かれており、タバコとは関係のない質問が記載されており、それぞれの箱に入れて回答するという方式になっていました。
ただポイ捨ての撲滅を呼びかけるだけでなく、発想の転換でタバコのポイ捨てを激減させることに成功しています。
タバコのポイ捨てが法律で罪になるケースと警察に通報してやめさせる事についてまとめ
この記事では、タバコのポイ捨てが法律で罪になる場合や、やめさせる方法についてまとめてきました。
タバコのポイ捨ては、ケースによって様々ですがいずれにしても大きな罪に該当するため、全員が理解して行為に及ばないことが重要です。
また、タバコのポイ捨てに対する警察への通報は可能ですが、「やめさせる」に繋げることはなかなか難しく、発想の転換の例を参考にしながら、地域全体が一丸となってポイ捨て撲滅に取り組んでいく事が非常に有効だといえるでしょう。